忘れていた夢に気づいたのは35歳の時。年齢で躊躇し、夢を諦める人は少なくないかもしれません。でもYumiさんは挑戦する方に賭けました。そしてカナダで、女優として様々な舞台、ドラマ、映画などに出演していきます。
「高い城の男」(原題:The Man in the High Castle)というドラマが今まで演じた中で一番大きい役ですね。日本人の役で、台詞も日本語だったんですけど、オーディションに受かって。
第二次世界大戦でアメリカが敗れた後の戦後、という設定のドラマです。アメリカの西海岸を日本が、東海岸をドイツが占領するんですけど、日本側の憲兵隊幹部、木戸憲兵隊長の妻役でした。
———そうやって、カナダで女優として着々と新境地を切り開いていく中、今日いちばん聞きたいのはこの質問なのですが・・・なぜ、スタンドアップコメディアンになろうと思ったのですか?
ドラマだけではなく、舞台もやっていたんですが、初めて主役を演じさせてもらったのが、コメディだったんですね。
シリアスな演技をしている時は普通に聞いているだけなんですけど、面白い台詞を私が言うと、お客さんは笑うんですよね。
そうなると、みんなが笑い終えるまで次の台詞を言うのを待たなければならなかったりして。お客さんと一緒に舞台を作り上げていくような感じがあって、毎回違うものができあがる、っていう経験をして。それがすごく面白いなと思ったんです。コメディって面白いなあ、と思っていた矢先に現在の彼氏に出会ったんです。ティンダー(オンラインデートアプリ)で(笑)。
———その彼は、どんな方なんですか?
カナダでは有名なスタンドアップコメディアンなんです。
2回目のデートで、彼のショーに連れて行ってもらったんですけど、すごく面白くて。
ショーのマネージャーに「日本人の女の子でスタンドアップコメディやっている人なんていないからYumiもやってみたら?」って言われて。
「うん、わかった。じゃあやってみる」って軽く返事をして、2週間後にその舞台に立っていました。2週間でネタを作って。
———早っ(笑)!
やってみて、どうでした?
それが、すごくウケたんですよね・・・!
初回ですごくウケるって珍しくて、大抵お客さんに引かれちゃうらしいんですけど。ネタの書き方とかもわかっていないし、自分が面白いと思うものが必ずしもお客さんも面白いと思うとは限らないじゃないですか。
でも、私は舞台も経験していたので、なんとなくリアルタイムでお客さんが期待しているものを意識してパフォーマンスをしたら、それがうまくいってしまって。あ、これはいけるな、と思いました。
———その後、何回くらいライブを?
100回位ですかね。
———着々と経験を積まれていますね。
ドラマや映画よりも、Yumiさんは舞台の方が好き?
そうですね。ライブパフォーマンスに惹かれます。テレビや映画は残るけれど、ライブは1回やったら終わり。
1回で、キラキラっとして消えちゃう、みたいなところにとても魅力を感じます。
ものとして残らなくても、人の記憶に残る。
同じネタでも、毎回観客も違うし、自分のコンデションも違うし、箱も違う。
毎回違うものができあがる。
いつもウケるところがウケなかったり、いつもウケないところなのに急に笑われ
てびっくりしたりとか。同じことをやっても毎回感じることが違う。毎回勉強になるし、何より楽しいです。