吉村泰典氏
吉村泰典

1975年慶應義塾大学医学部卒。1995年同大学医学部産婦人科教授。
日本における不妊治療の第一人者。2013年3月から内閣官房参与(少子化対策・子育て支援担当)。
日本産科婦人科学会理事長、日本生殖医学会理事長、日本産科婦人科内視鏡学会理事長など、数々の学会の役職を歴任。

インタビュー: 司寿嶺 吉田みか    テキスト: 司寿嶺

ダイエットによる弊害

若い時期には月経困難症とか月経不順などの月経異常があるでしょう。無月経になる子も多いですね。これは、女性の体重が大いに関係しています。ダイエットしますよね、体脂肪率が減少する、そうすると無月経になる。痩せて月経がないだけだとなんの問題もないかと思っているかもしれないが、無月経になると女性ホルモン、エストロゲンというホルモンが出なくなるんですよ。一番大きな問題になってくるのは、骨塩量、骨が丈夫かどうかという問題です。骨塩量は、10代の後半くらいがピークで、20歳くらいで止まってしまう。こういった大事な時期にエストロゲンという女性ホルモンが減少すると、骨塩量が減ってくるわけです。これが将来、骨粗鬆症という病気につながっていく。だからダイエットは非常に危険です。

今の若い人たちには体重の認識障害がある。
痩せていても太っていると思っている人もいれば、痩せていても普通だと思っている人もいる。正常であっても太っていると思っている人が多い。マスコミや宣伝の影響もありますよね、痩せるのが美しいとかいって。そういったことが無月経を助長させている。
痩せることにより、妊娠もしにくくなるんですよ。治療して妊娠することができたとしても、生まれた子供に対して影響を与える。小さな子供がうまれてくるわけですよ。そうすると、その子供が将来生活習慣病になっていく。
若い時の、ちょっと痩せたいなといった食事制限が、将来さまざまな問題を起こすことも教えていかなくちゃいけない。
昔の妊婦さんは太っている人が多かった。僕たちが医者になった頃は、「太らないでね、食べ過ぎたらだめよ、塩分は控えないと」とか言っていたんだけど、今は逆に「太ってください」って言っている。今の赤ちゃんは非常に小さい赤ちゃんが多い。というのも、妊婦さんで痩せている人が多いから。
平均9~11キロくらい太るのがいいんですけど。
だいたい今は5?6キロくらいしか太らない人が多い。それはなぜかというと若い頃から痩せているということに対する願望があって、そういった食生活に慣れてしまっているんですね。

思春期の教育って非常に大事で、たとえばモデルなんてすごく痩せていて非常に美しいけど、ヨーロッパなんかでは痩せすぎのモデルを失格にしたりしているんですよ。美しくても、痩せていて、BMIが17以下の人は雇わないようにしている。痩せ過ぎは決して美しくないこと、将来さまざまな問題を起こしますよといった教育が必要です。