スプツニ子!氏
スプツニ子!

アーティスト。テクノロジーによって変化していく人間の在り方や社会を反映させた映像、音楽、写真、パフォーマンス作品を制作。最近の主な展覧会にバイオ技術から生まれるファッションの未来を想像する展覧会「bionic by sputniko!」「第3回瀬戸内国際芸術祭」(ベネッセアートサイト常設作品2016)など。2017年より東京大学生産技術研究所RCA-IISデザインラボ特任准教授に就任。2016年4月〜NHK「スーパープレゼンテーション」のMCを務める。著書「はみだす力」(宝島社)

インタビュー・テキスト: 司寿嶺

「スプツニ子!的幸福論」

———スプツニ子さんにとっての、幸せって何ですか?

「人のつながり」が大事だなと思います。
自分が辛い時に家族や友達に助けてもらって、どれだけ救われたか。
そういう時に引き上げてくれるのは、「人」なんですよね。
自分に社会的地位が無くても、お金がなくても、こういう家族や友達がいれば幸せな時間って過ごせるな、って思います。
私にとっての幸せは、大事な人と楽しい時間を過ごすこと。

あと、楽しいと思えることを丁寧にやっていくことかな。
私の場合、趣味を仕事にしてしまったので、仕事がオーバーワークになって楽しいと思えなくなった事があるんです。
そうすると、仕事の他に趣味を作ってなかったので、「人生楽しいこと何も無いじゃん」って思ってしまったことがあって。
そこから自分が楽しいと思える事を丁寧に探し始めました。料理楽しいなとか、散歩楽しいなとか、スポーツ楽しいなとか。風が気持ちいいな、くらいでいいと思うんですよ。
今は仕事の量を減らして、大事に思える仕事だけをやろうって思っています。でも人によっては、仕事を生活のため、と割り切っている人もいると思うので、そういう人は、仕事は心を削られない程度にやって、あいている時間で生き甲斐、趣味を持つとかね。
人間として人生を丁寧に楽しむことと、人とのつながりを大事にすること。
が大切かな。


男女平等って、女性の管理職が何%いるか、収入がどれだけあるか、という観点から考えられがちですよね。世界経済フォーラムの男女平等指数とか、政治家の比率とか。それも一理あるし、お金がたくさんあるとか、政治的に力があることは、資本主義社会や政治に影響を持つことでもあるんですけど。
でも、資本主義社会と政治自体は、結構マッチョなフレームワークで作られていると思うんです。
世界経済フォーラムが、女性の地位が低いとか、収入が低い、とか言っても、出世をしなかった女性の3割くらいは、「わざわざ出世してお金をもらうより、わたしは充実した自由な時間を過ごしたいわ」っていう決断をした女性も含まれていると思うんです。
私はそういう選択も尊重するし、世界経済フォーラムの軸で生きたい女性がいれば尊重する。自分は人間であり、自分の幸せは、社会的評価やお金や、ましてや世界経済フォーラムが設定するような尺度で計られるものじゃない、と確信することが幸せにつながるんじゃないかな、と思います。
スプツニ子!氏
それと、人が生きていく上で、「無駄」って大切だと思うんですよ!
無駄なことって、他から評価されることじゃないから、世間的に無駄だと思われていることを純粋に楽しむことが、人間の営みと幸せなんじゃないかなって。
みなさん、無駄だらけの人になりましょう!(笑)


最後に、「人生における選択に迷っている女性たちに一言」とお願いしたところ、それぞれの置かれている状況によっても違うと思うので・・・、と今回は2パターンのメッセージをいただきました。

「キャリアアップしたい女性へ」

女の人って自信がない人が多いと思うんです。
何か難しそうなプロジェクトのオファーをもらって「自分にできるかな?」と思った時、ちょっと背伸びして「できる!」と引き受けてみると、背伸びした分頑張らなきゃいけないから、能力が上がるんですよね。
それを謙虚に「私にはできないと思います」と断ったり、あきらめる人もいるけど、そうするともったいないことがある。
もし、あなたがいま自分の能力を上げたい、という気持ちがあるなら、自分に無理かも、って思った時が、それはチャンスかもしれない。ちょっと背伸びしてやってみることが、成長につながると思います。

「バリバリ働いている女性へ」

他人から見た幸せを気にしたり、外から見た幸せに頼ると、それはずっと満たされない。それはたとえば、お金、とか社会的評価とか、SNS映えとかかもしれないけど。
それらをとことん離して、仕事、家族、趣味、いろいろあるかもしれないけど
1回しかない人生、何が自分にとって楽しい時間か、何が自分にとって大切か考える時間を持つことで、自然と一日の時間配分がわかってくると思うんです。
自分の幸せの軸をしっかり考える時間を持つことが、大切だと思います。